本田流鎮魂法その2(除霊編)
一、 心身を清める。
これは、手を洗い、口をすすぎ、清潔な衣服に着替えればよい。
本来は、白衣、白袴で行うのだが、洋服でも差し支えない。
ただ、正座をするので、そのぶん、身体にかかる緊張を覚悟しなければいけない。
しかし、緊張をしいられては本来の修行にならないので、できるだけ楽な服装をすべきである。
二、 綿の袋から鎮魂石を取りだし、三方の上に安置する。
三方とは、神仏や、貴人にたいして供え物を捧げるさいに用いる儀式的な台のこと。
四角い折敷の下に胴があり、その胴の前、右、左と三方に穴があることからこの名がある。
三、 鎮魂石が置かれた三方の前に正座する。
四、 正座したら、静かに呼吸法を行う。
鼻から静かに息を吸い込み、しばらく息をとめ、それから静かに静かに口から息を吐き出す。
子の方法で、数回あるいは十数回行う。
五、 呼吸法を終えたら、鎮魂石に向かってニ拝、二拍手する。
六、そして胸の前で鎮魂印を結ぶ。
印の結び方は、まず中指、薬指、小指を手の平の中に組み合わせる。いずれも、左の指を下に組む。
人差し指は伸ばして、軽く立て合わす。親指は、左の親指で右の親指の爪を軽く押さえる。
印を結んだら胸の前に置くのだが、胸の間は拳がひとつ入るくらい開けておく。
結んだ印を高すぎる位置にもってくると疲れ、低すぎると精神が弛んでしまうので注意する。
正座している足は、右足の親指で左足の親指を軽く押さえるくらいに浅く組み合わす。
正座して印を結んだ状態は、身体のどこにも力をいれず、ゆったりとかまえる姿勢が大切である。
七、 印を結んだら軽く目を閉じて自分の霊魂が鎮魂石に集中することを凝念する。
つまり、我が霊魂が鎮魂石に鎮まるという強い思念を送るのである。だが、力みかえってはいけない。
時間的に1回二、三十分、一日に何回行っても差し支えない。
八、 終了後、鎮魂石に向かって二拍手、二拝。
この鎮魂法は、静かな場所で行うとよいとされている。だが、修業がすすむと、どんな環境であってもただちに鎮魂状態に入れるようになるという。
最初は、あまり広くない四畳半ほどの部屋で、昼間なら北向きの部屋がよいとされている。
鎮魂が深まってくると、どのような状態になるのか。
本田親徳によると、この鎮魂法を行う場合、いっさいの妄想を除去し、感覚を澄まし、
意念を断滅しなければならないのだが、最初はどうしても雑念や妄想にとらわれるという。
だが、修業を続けるうちに意識が冴え渡り、清澄になってくる。
すると、耳がしーんとなり、目を閉じているのにもかかわらず、鎮魂石が見えだしたりする。
こうなれば、雑念や妄想は消え失せ、まさに天地の「玄気」と一体となった境地に導かれることになる。
人によっては、感覚の拡大や、霊肉分離、脱魂状態などの異象を生じることもある。
身体がどんどん拡大していき、ついには虚空に溶け込んだような感覚に陥ったりする。
また逆に、どんどん縮んでいってしまい、身体がなくなるような感覚にいたる場合もある。
いずれの場合でも、自分の霊魂だけは鎮魂石の正面にとどまっていることを自覚できる。
あるいは、自分の霊魂は虚空にあるにもかかわらず、鎮魂石は眼前にあって、自分の身体は下方に見えたりする。
こういう境域に至れば、相当に鎮魂法を修めた証拠になる。
霊能者によっては、鎮魂法を行わずに、いつでもこういった状態に入ることができる。
鎮魂効果があらわれるようになると、鎮魂を終えたあとの石の重さに明らかな増減が生じることもある。
ここまでくると、数メートル離れたところにある庭木にばさばさと音を立てさせたり、神への捧げものや御幣を動かしたりできるようになる。
初心者の場合、感情が高まっている時や、気分の悪い時は鎮魂を行わないのがのぞましい。
妙な霊物や低級霊が憑依する場合がある。
すでに鎮魂できるものは、それらを鎮めることができる。